別冊ファミリア|変容する家族のカタチ


イタリアの家族は絆が強い。
仕事中心の生活から離れ、
家族と過ごす時間が大切。
余暇の楽しみは子どもたちと。






婚約の際、驚いたり、戸惑ったりしたことは?

イタリアでは、婚約の手続きや慣習はなく、逆に付き合いだすと家族にすぐに紹介したり、家で一緒にご飯を食べたりというのが普通で驚きました。

また、同棲も普通で、同棲を10年とか15年続けてやっと結婚という人も少なくないですし、籍を入れずに一緒に家を購入したり子供を作ったりも、ありなので驚きました。

ですから、いわゆる“デキちゃった婚”などはありません(笑)。


結婚式を挙げる際、日本と異なる手続や慣習は?

フィレンツェでは市役所式と教会式の2種類があり、日本のように婚姻届を出して終わり、というのはありません。

市役所での結婚式は、30分くらいで、婚姻にまつわる法律を読み、担当職員からの祝辞、記念品贈呈、指輪交換などです。市役所内の専用ホールで行われますが、フィレンツェではヴェッキオ宮殿内の赤の間です。また、市役所式を行う前に2週間ほど婚姻の告示が行われます。

一方、教会での結婚式では、属する教会区の“準備講座”に出席する必要があります。私のように、片方が信者でなければ、神父さんとの面接やヴァチカンの支局へ大量の書類提出が必要でした。

市役所、教会式とも証人が必要で、日本の仲人のように上司などのケースは少なく、だいたいが兄弟か親戚、親しい友人です。

いずれも式の後は新郎新婦だけでフォトツアーに出かけ、名所などで撮影を行います。フィレンツェですと、町が見下ろせるミケランジェロ広場が定番です。

参列者は、レストランや施設を貸切って披露宴会場にし、食前酒と軽食で時間をつぶすようになっています。

食事後はDJがいてダンスタイムが始まり、最初は新婦と新婦父、新郎と新郎母などがワルツやチークを踊ったりしますが、最後は皆でエキサイト、式開始から披露宴終了までが10時間というケースも少なくありません。

日本のようにお祝儀はなく、家財道具が揃う指定のお店に欲しいものリストを置いて、友人がその中からプレゼントをすることが多く、すでに同棲や家を持っている人は旅行代理店を指定し、新婚旅行の費用を積み立ててもらったりします。


イタリアで国際結婚する場合、特別な手続や制度はありますか?

婚姻については、日本から戸籍を取り寄せ、現地大使館で婚姻要件具備証明書という書類の作成が必要となります。

結婚後は家族用の滞在許可証に変更になりました。


名前をどうするかについては、話し合われましたか?

こちらでは夫婦別姓が普通で、子供は父親の姓をとります。


国籍については、いかがでしょう?

子どもは、日本の法律で22歳までは二重国籍が可能なので、イタリアでは主人の姓、日本では私の姓になっています。

主人と話しましたが、自分たちで決められるまで二重国籍保有にすることには意見が一致しました。

私自身も結婚してから一定の時間が過ぎたのでイタリア国籍を取得することができるのですが、そうなると、日本国籍を放棄しないといけなくなるため、自分のため、また子どもに日本国籍の可能性を残すためにも日本国籍にしています。主人も反対なしですんなり決まりました。

なお、イタリアの法律では二重国籍は可能です。


イタリアで「国際結婚」に特有の手続きなどがありましたら、教えてください。

滞在許可証くらいで、特にありません。

ただ、法律が頻繁に変わり、許可証を発行するのは警察署の移民事務所なのですが、かなりいい加減な場合が多く、正しい情報を手にするのに一苦労です。担当官の態度も褒められたものではありません。


日本でも国際結婚は増加の傾向にあります。
国際結婚の難しい点は、どのようなことでしょう。

イタリアでも国籍を変えないと選挙権はありません。しかし、それ以外ではイタリア人と同等の権利があるので困難はそれほど感じていません。

文化というほどのことではなくても、自国にはない日々の当たり前のことを本人と家族が受け入れられることが大事だと思います。


国際結婚でこそ得られる幸福感や楽しさというものは、どのようなことでしょうか。

家族が2カ国にいる、子供がバイリンガルになる可能性がある、あるいは離れた自国のことが客観的にみられる、というような点でしょうか。


イタリアにおける「家族」の印象は?

家族を本当に大事し、家族のきずなが強いと思います。

キリスト教の影響もあって、祝日は家族で食事するのは当然ですし、毎週末に家族で集まったりしています。

また、お出かけや結婚式などのイベントに参加するのも夫婦や子供連れが普通です。

頻繁に電話をかけて何気ない会話を楽しみ、誕生日にもお祝いの電話がかかってきたり、家族は人生の中心ということが日々感じられると思います。


国際結婚は、日本の「家族」の在り方を変えるでしょうか?

変わると思います。

イタリアと比べた場合ですが、仕事中心の生活から、家族と過ごす時間が増え、余暇を家族とともに楽しむようになるはずです。

日本では“イクメン”という言葉も最近あるようですが、お父さんも育児するのがもっと当たり前になるでしょう。


国際結婚がスタンダードになるためには、どのような制度をどのように変えるべきだと思いますか?

一番に思うのは、二重国籍を認めてほしいです。

いろいろな理由はあるでしょうが、ハーフの自分の子供がどちらかを選択し、どちらかを捨てなければいけないというのは、親として悲しいですね。


あなたにとって、家族とは?

何にも代えられない、いちばん大切なもの。幸せの源。










中山久美子フランジ Nakayama Kumiko FRANDI

通訳者/翻訳者(日本語、イタリア語)
1972年生まれ、兵庫県出身
早稲田大学第一文学部卒
フィレンツェ語学学校、フィレンツェ大学文学部(単科コース)に留学。
ファッション関係、家具関係などを中心に、通訳と翻訳を行う。その他、旅行企画や現地サポート、交渉、取材コーディネイトなど、多彩な活動を行っている。

現在、イタリア出身のご主人、二人の子どもたちとフィレンツェ郊外に住む。